遅き日の つもりて遠き むかしかな
春の海 ひねもすたり のたりかな
釣鐘に とまりてねむる 胡蝶かな
ゆく春や 撰者をうらむ 歌の主
ゆく春や 逡巡として 遅ざくら
高麗舟の ようで過ぎゆく 霞かな
夏川を こすうれしさよ 手にぞうり
牡丹散つ てうちかさなりぬ 二三片
五月雨や 大河を前に 家二軒
涼しさや 鐘をはなるる かねの声
不二ひとつ うづみ残して 若葉かな
みじか夜や 毛虫の上に 露の玉
四五人に 月落ちかかる 踊かな
月天心 貧しき町を 通りけり
白露や 茨の刺に ひとつづつ
灯篭を 三たびかかげぬ 露ながら
鳥羽殿へ 五六騎いそぐ 野分かな
山は暮れて 野は黄昏の 薄かな
易水に ねぶか流るる 寒さかな
うづみ火や 終には煮ゆる 鍋のもの
宿かせと 刀投げ出す 吹雪かな
水鳥や 堤灯遠き 西の京
寒月や 衆徒の群議の 過ぎて後
水鳥や 枯木の中に 駕二挺